「…さてと、学校行くか」
先生は、そんなあたしを見て一度何かを考えるかのような間を置いた後、そう言いながら立ち上がった。
「え、今日って平日!?」
てっきり昨日は金曜日だと思っていたあたしは、少し開放的な気分になっていたんだ。
だから焦ったあたしは、部屋を見渡し、時計を探す。
「いや、俺は仕事だから、今日も行くだけ」
先生は酷く落ち着いた声でそう言うから、あたしが子供なのがよく目立つ。
「ああ……そっ、か」
そう言いながら、勝手に焦って時計を一生懸命探していた自分が恥ずかしくなってくる。
だからか、声もだんだん弱々しくなっていった。
「じゃ、準備するわ」
先生は忙しそうに、あたしの隣を通り過ぎて行った。
その時吹いた、柔らかで小さな、だけど冷たい風が、何故かあたしの涙腺を誘った。
心を冷ますような、突き放されるような、触れてはいけないような。
そんな残酷な風が、あたしをとても悲しくて切ない気持ちにさせる。
何故か、なんてあたしにも分からない。
先生が通り過ぎる瞬間がスローモーションに見えたあたしは、ゆっくりと先生の方を向いて、呆然と立ち尽くす。
通り過ぎたはずの先生は、すぐに振り向いて、ほんの少し悪戯っぽく笑った。
「俺、キャラ作りは準備から始めるタイプだから」


