午前3時、先生のカオ。







 先生から視線を外しても、あたしは先生のことを考えなくなったわけではなかった。




 先生も、なにかあったのかな。

 なにか、誰にも言えない様なことがあったのかな。

 ずっと悩んでいることが、自分を苦しめ続けていることがあるのかな。


 あたしは、自分が傷つくのは良いと思ってる。

 だって、あたしはきっと、苦しまないとダメな人間だから。

 それくらい、あたしは夏希に酷いことをし続けていたから。


 でも、他の人には傷ついていてほしくない。

 なにがあったのかなんて知らないけど、傷ついていてほしくないんだ。


 あたしみたいに、なってほしくないから。



 ………なんて言ったって、きっと、可笑しいって笑われるんだろうな。






「………あ、パン食べたんだ」


 先生があたしに気付いたみたいで、そう言ってきた。


 あたしは先生の方を見て、


「あ、うん……だ、ダメだった?」


「いや、別に」



 もう先生は、さっきみたいな瞳も顔も捨てていて、携帯も、手の中にはなかった。


 本当に、まるでさっき見た顔が、あたしの勘違いだったのかと思えてくる。


 きっと先生も、あたしがあの顔を見ていたことに気付いていないだろうし、もう普通なんだから、何も知らないフリをしたらいいのに。


 そうするのが、優しさなのに。


 あたしは、どうしても動揺してしまっている。

 本人よりも。