午前3時、先生のカオ。







 でも、ちょっとこれは引く。


 カレー、パン、野菜炒め、卵焼き、漬物、ご飯………

 果たしてこれが、成人男性の一人暮らしの冷蔵庫なのだろうか。




「先生、これ……」


「ああ、それ昨日のだし、大丈夫」



 驚いて先生の方を見ると、煙草を吸いながら携帯を見つめていじっている先生は、そう軽く答えた。


 いや、そういうことじゃないんだけどな……。

 そう思いながらも、あたしはロールパンを手に取って、冷蔵庫の扉を閉めた。




「ねぇ、先生……」


 パンを袋から出しながら、先生にそう話しかけたけど、すぐにやめた。


 本当は、昨日のことを聞きたかったんだけど。

 だって、先生があの時どう思ったのか気になったから。




 でも、

 携帯を見つめる先生の瞳が、寂しげに揺れたことを見てしまったから。


 反射的に、聞いちゃいけない気がして。

 いや、ただ単に、驚いただけなのかも。



 あんな悲しい顔、見たことなかったから。

 当たり前だけど、先生がそんな顔をしたことはなかったから。



 あたしは、知っている。

 その顔をするときは、他の人には触れられない、触れてはいけない、何かがあることを。


 ……だって、あたしもそんな顔をしているはずだから。

 何回したかとかは分からないけど、絶対、昨日はそんな顔をしていた。


 だからあたしは、視線をパンに移して、パンにかぶりついた。