言っとくと、今言ったおっさんはこの刑事ではない。


 50歳くらいの太ったサラリーマンみたいな人のこと。



 ここに来た経緯を簡単に言うと、

 家を出て街をうろついてると、おっさんに『5万あげる』って言われたからホテル行こうとしてたら、刑事さんに呼び止められて警察に連れて来られたんだ。


 まあ、ホテル行こうとしたのはただの遊び。


 もちろん、行くつもりなんてないよ?

 ただからかってただけ。



「体売るつもりはなかったんだな?」

「もちろん」

「はぁ……」


 何故か刑事さんにため息をつかれた。




「じゃあ親御さんに電話……」

「あー、待って」


 親に電話しようとする刑事さんの服の袖を掴んだ。


 親は……ちょっとね。



 だって、ただのケンカじゃないんだもん。


 今は……帰りたくない。



「親は止めて?」

「あのなー、ケンカしてるからって」

「本当に!お願い!」


 両手を顔の前で合わせてお願いしてみる。




 刑事さんはまたため息をつくと、


「じゃあ、学校な」

 と言った。