だから、どんなに逃げても。
逃げ切ることは………できない。
「んん~……え」
そんな声が聴こえてきて、あたしはパッと目を開いた。
明らかに、何かに驚いている声。
多分、先生が起きたんだろう。
それで、この状況に気付いたんだよね?
……安心した。
先生が起きなかったら、どうしようかと思ってたし。
すっと、あたしの頭と背中に回っていた手の力が弱まり、あたしはすぐに起き上がった。
ソファから退いた後に見えた先生の顔は、目を見開いていて、驚いているのがよく分かる。
「お、おはようございます……先生」
あたしは驚いている先生を見ながら、さっきのことを思い出して、少し控えめに挨拶をした。
「あ、ああ………はよ」
先生はそう言うと、ゆっくりとソファから起き上がった。
あたしは少し後退り、道をあける。
先生はあたしがあけた所から、キッチンの方へ怠そうに頭をくしゃくしゃにしながら歩いて行った。
あたしはその姿を、ぼーっと見つめる。
本当、その姿が様になっているから不思議だ。


