「玲汰先生、あたし……玲汰先生のこと、好き、だよ」






 気づくまでに、大分時間がかかっちゃったけど。

 やっと気付いた、嘘偽りのない、本当の気持ち。


 玲汰先生と過ごした日々は、無駄なんかじゃなかった。

 きっとあの何気ない日々が、小さな小さな〝奇跡〟だったんだ。




 遠回りの日々で。


 玲汰先生はあたしの心の中に土足で入り込むようなことはしなかったけれど。

 それでも、あたしのことを優しく包んでくれていた。



 ねえ、玲汰先生。


 〝ありがとう〟は。

 あたしが言わなくちゃいけない言葉なんだよ。



 



「……俺も、好きだよ」


 玲汰先生はそう言うとあたしを抱きしめる腕の力を緩めた。


 あたしはそっと顔を上げ、玲汰先生を見つめる。



 そしてあたし達は笑い合った。

                
 涙で濡れた頬は、二人とも同じで。