「……今日、なんなの?夕飯」
急に怖く……というより恥ずかしくなったあたしは、そう口にした。
「ああ……カレーよ。……千夏も、一緒に食べる?」
お母さんは少し戸惑い気味にそう言う。
お父さんはあたしを見つめているだけだった。
だけど焦っているのか、スプーンを持つ手が少し震えていた。
「うん……」
「じゃ、じゃあ今からよそってくるから。そこに座ってて」
お母さんは少し早口でそう言うと、キッチンへと消えて行った。
あたしはいつも通り……なのかは分からないけれど、昔から座っていた席に座る。
椅子は、昔から変わらず4つ。
今日もお母さんとお父さんは二人だけでも隣同士で座っていた。
あたしと夏希の席は空けたままだった。
「……はい」
「ありがとう……」
しばらくして、お母さんがカレーを持ってきてくれた。
三人で食卓を囲むのは、本当に久しぶりだ。
だけど、あたしの心は緊張でいっぱいだった。
いつ話そうか。
それだけを考えていて。
みんなどこかぎこちなくて誰一人喋らない静かな食卓では、話すタイミングが中々見つからない。
というよりは、タイミング自体がない。


