リビングのドアに手を掛けた所で、あたしは一度立ち止まった。
この先、あたしにはどんな未来が待っているのだろう。
正直、目を背けている現実と向き合うということはとても勇気がいるものだ。
怖いし、辛い。
逃げてしまうのは簡単なこと。
だけど逃げてしまっては、なにも解決しない。
なにも、変わらない。
悲しい現実も、この現状も。
だから、逃げていたって意味がないんだ。
あたしは、変わりたい。
例え話し合ったところで、両親の気持ちを聞いたところで、なにも変わらなかったとしても。
それでも、なにかは掴めると思うんだ。
変わりたいと願うだけだったとしても、結局変われなくても。
〝行動する〟ということに、意味があるんじゃないかな?
「よしっ」
左手に握りしめている合鍵を少し見つめた後、あたしは勇気を出してドアを開けた。
リビングの中。
いや、リビングに繋がっているダイニングでは、両親が食事をしていた。
夏希が死んでしまってから両親と食事を共にしたこと、あったっけなぁ。
何れにせよ最近は全くなかったため、リビングへとやってきたあたしを見た両親は二人とも驚いたような表情を見せた。


