向き合うだなんて、前向きになるなんて、自分の都合のいい風に解釈しているんだ。

 そう思ったこともあった。


 だけど、それじゃいけないんだ。




 玲汰先生との日々で、あたしは気づいた。

 この世界は変わらないけど、自分の世界は変えられるんじゃないかって。



 ねえ、夏希。

 こんなお姉ちゃんを、許してくれますか。


 夏希の死に向き合おうとしているあたしを、許してくれますか。








 あたしは着替えもせずに、玲汰先生の家の合鍵を持ったまま両親がいるリビングへと向かった。






 両親の気持ちを聞いたとして、あたしが傷つく可能性は何パーセントだろうか。


 例えそれでこれからもっと苦しむことになったとしても、後悔はしない。

 その苦しみが、今あたしがしようとしていることの代償なら、全然構わない。


 その苦しみの分だけ、もらえるものがあるはずだ。

 なにかが掴める気がするんだ。






 あたしの意思は、固かった。