懐かしいそれは、やっぱり変わらない。





「返し忘れちゃったなぁ……」


 そう呟きながら、玲汰先生の家の合鍵をキーケースから取り出した。


 どうやらあたしは、あんなに使っていたのに最後返すのを忘れてしまっていたようだ。



 この鍵には思い入れが沢山あって、忘れていたことまで思い出させてくれる。




 補導されたあの日。

 玲汰先生に抱きついて泣いたっけなぁ。

 次の日。

 玲汰先生に『逃げてる』とか生意気なことを言ったんだっけ。


 あたし、全然生徒らしくないなぁ……なんて思って苦笑した。



 確か夏希への想いとか話したのも、玲汰先生だけだったな。





「……本当に、これでいいのかなぁ」


 ふと持った、疑問だった。



 心の何処かで躓いている思いがあった。


 それはなんなのか。

 分からないけど、なにかしなくてはいけないという思いに駆られた。



 玲汰先生と過ごした何気ない日々で、確かに変わったものがあったはずだ。



「話して、みようかな」