2月中旬。

 バレンタインが近づき、街中にカップルが溢れ返っている今日この頃。


 あたしは普通に学校に通っていた。



 噂もすっかり薄れ、今ではあの噂が本当にあったのかなと思えるくらいになっている。

 だからたまに玲汰先生と話しても、なにも言われないしみんな気にもしていないようだ。




 ただ、あの噂が流れていたことを証明してくれているのは、二つだけ。


 美和と話さなくなり、今は二人とも別の友達と一緒にいるということ。


 もう一つは、玲汰先生との関係が元に戻り、学校のキャラの玲汰先生しか見てないということ。

 すっかりあたしは、本当の玲汰先生が嘘だったかのように、今の優しい玲汰先生に慣れてしまった。






 そんなあの日々とはガラッと変わった今でも、一つだけあの日々と変わらないことがある。



 それは、玲汰先生のことを想う気持ち。

 今でも時々思い出しては、あの時感じていた気持ちに浸っていた。


 あんなことあったな、とか。


 優しくて温かくて。

 それでいて、切なくて悲しい想いに浸っている日々を送っていた。


 不思議だけど、この気持ちだけは消えてくれなかった。




「はぁ……疲れたー」