ここに来る前の日々に戻るだけだ。
その日々の方が慣れているはずだ。
だから、平気なはずだ。
だけど一度安らぎの場所を知ってしまうと、どうしても元の生活に戻りたくなくなる。
でもきっと、それも一瞬だ。
だってたった何ヶ月のこの日々も、一瞬のようなものだったんだから。
「できたっ」
あたしが作ったのは、オムライス、グラタン。
実は得意料理だったりもする。
出来上がった料理を机に並べた瞬間、玄関のドアが開く音がした。
……玲汰先生が帰って来たんだ。
少しずつ近づいていく別れ。終わり。
それを実感して、悲しくなる。
少しして、リビングのドアがゆっくりと開く。
「おかえりー」
「……ただいま。お前、なんで来てんだ?」
笑顔で玲汰先生の方を向くと、驚いた顔をして立っている玲汰先生。
玄関に靴を置いているし、明かりだって点いているんだからあたしがいることに気付いていたはず。
だけどやっぱり一週間来ていなかったし、噂も流れてるんだから、驚くのも当たり前だろう。
「んー、ちょっとね……あっ、ご飯出来てるよ」


