玲汰先生の家に行けないってことは、これから辛いことがあっても逃げる場所がなくなるってことだ。
やっと気付いた。
あの場所が。
あの、何気なくいた場所が。
あの時が。
あの、何気なく流れていたひと時が。
あたしの心の救いだった。
あたしの心の癒しだった。
あたしの、居場所だったんだ。
なのに、なくなってしまう。
あたしはまた、孤独という闇の中で生きるのだろうか。
毎日毎日、ずっと後悔しながら。
苦しみながら。
生き続けるのだろうか。
……怖い。
玲汰先生の家に通うようになる前までは、当たり前のことだったのに。
辛くもなんともなかったのに。
玲汰先生と一緒にいるようになったからだろうか。
玲汰先生の、人の温かみに触れたからだろうか。
また前みたいな日々が訪れるのかと思うと、怖くて仕方ない。
やっぱり、世界は残酷だ。
この世界に生まれてよかったって思わせてくれたこと、一度もないな。


