それからあたしは、教室を素通りしてトイレに駆け込んだ。
色々、いっぱいいっぱいだった。
平気なフリをしても、やっぱりみんなの視線が痛かったし、怖かった。
……美和に無視されていることも。
何よりも辛いのは、もう玲汰先生の家に行けないということ。
こんな噂が流れた以上、今までみたいに気軽に玲汰先生の家に通うことは、まず無理だろう。
それに、玲汰先生にも迷惑かかっているし。
だからもう、行けない。
トイレの個室に入ると、あたしはトイレの上に乗って体育座りをした。
そして膝に額をつけ、ため息を一つ吐く。
「……うぅ。ヒック……」
自然と、涙が出てきた。
次は理科。
つまり、玲汰先生の授業だ。
みんなの目も気になるし、受けられるわけがない。
泣きながら、そっと考える。


