悲しそうな、その言葉。


 玲汰先生の心境を考えて、胸がきゅうっと苦しくなる。





「俺には、信じられなかったよ。誰よりも信頼していた人だったから、裏切られた気持ちが大きくて。そんな優しさ、要らなかった」




 裏切られた。

 玲汰先生のその言葉が、夏希と重なる。




「なにも、信じられなくなった。愛していた人からの仕打ちは、それぐらい俺の心に刺さった。でも、子供が出来たらさ、なにも言えなくなるじゃん。嘘なんかじゃない。これは現実なんだって」



 今の玲汰先生がいる、理由だろう。

 面倒臭いで守ってきた、弱さ。怖いという思い。自分の心。




「呆然とする俺をよそに、二人は幸せそうに笑ってたよ。……俺は、家を飛び出した。それから、家には一度も戻ってない。……祖父母の家に住ませてもらって、なんとか今までやってきた。だけど、今も……」





 玲汰先生は言葉を詰まらせた。


 その切なげで今にも消えてしまいそうな声が、全てを物語っている。




「俺は今も、心の何処かで想ってるよ。ずっとずっと、引きずっている。あいつの、ことも。全て。」


「……ねえ。あいつって、写真の……?」


 油断してたんだ。

 だからつい、出てきた言葉。



「え、お前、なんで写真のこと……」