ああ、もうっ!
あたしはそのよく分からない感情を無視して、玲汰先生の話に全神経を集中させる。
「好き、とか言うことで精一杯で。恋人っぽいことは全然しなかったけど、それでもちゃんと、好きだった。高校も一緒だったし、それこそいつも一緒にいて」
また、写真の彼女が頭に浮かぶ。
あの写真も入学式のものだったし、もしかして。
徐々に、予想が確信に変わっていく。
「そんなある日……親父に、呼び出されたんだ」
一度落ち着いた玲汰先生の腕が、再び震え始める。
「不思議に思いながら、その日の夜、リビングに行った。俺、リビングに入った瞬間、驚いたんだ。だって……」
玲汰先生が息を呑む音が聞こえる。
「親父の横に、幼馴染でもあり、当時の俺の彼女の、あいつもいてたから」
玲汰先生の声が震え、時折鼻を啜る音も聞こえる。
玲汰先生も、もしかしたら泣いているのだろうか。
ここからでは、何も分からない。
だけど、あたしは玲汰先生のために、動こうとはしなかった。
「……ほら、俺の家幼い頃に両親が離婚しているって言っただろう?……だから」
だから・・・--
話の続きが、少しだけ予想できた。
「だから、親父とそいつが、結婚するって」


