「そう言って、夏希は……」
あたしは息を呑む。
「……飛び、降りたのっ」
ずっとずっとあたしが抱えていた、大きな爆弾。
その爆弾に悲鳴を上げているあたしの心が、今やっと、助けを呼んだ。
「えっ……」
流石の玲汰先生も、このことには驚いたようだった。
「あたしの部屋の、ベランダから。丁度お母さんが帰ってきて……少し、目を離した、だけで」
そう、それは本当に一瞬の出来事だった。
だけど、その一瞬は、何よりも尊くて何にも変え難いものだったんだ。
「……全て、あたしのせ、いなのっ」
「え、ちょっと待って。その……お前の妹の夏希って子は、今……」
「……うん、死んだよ」
妙に落ち着いて出した言葉は、話にもっと現実味を増させる。
「……そ、うなんだ。あ、ごめん。話戻して」
覗き込むように玲汰先生の顔を見上げると、玲汰先生は驚きつつも納得してそう言った。
「……夏希がいなくなって、ようやく気付いたの。誰よりも、夏希のことがっ……うぅぅ」
「……うん、大丈夫」


