「いくつからだったっけな?夏希のこと、死ねばいいのにって思うようになったのは」
「…………。」
「中2の時、あたしには好きな人がいたの。ある日、その人に呼び出されて……嬉しかったな。勝手に何言われるか想像して、舞い上がってさ」
そう言いながらその時の淡い気持ちを思い出し微笑んではみるが、心の中は空っぽだった。
「……でもね、言われたのは……夏希のことが、好き、っていうこと、だった」
震える声と手。
今にも泣き出しそうだ。
いや、実際にもう、心は泣いている。
あの日、夏希を失ってから。
あたしの心は土砂降りの大雨で、一向に晴れてくれない。
「……夏希の、ことを、これまでにないくらい、恨んだ。恨んだって仕方ないのに、あたしは……」
「……うん」
玲汰先生が震えるあたしの身体を右手でそっと自分の方に引き込んだ。
驚きはしたものの、温かいその腕はあたしをすぐに安心させる。
そしてなにより、あたしを包む玲汰先生の腕も震えていて、あたしは玲汰先生を宥めるつもりであえて何もせず、玲汰先生の肩に頭を乗せた。
玲汰先生は震える手をあたしの頭の上に乗せる。
自然と涙が溢れ出す。
「自分の部屋で、泣いてたの。そんなあたしを、心配、してっ……夏希が部屋に……」
泣いているせいか、段々途切れ途切れになっていく言葉。
拙い言葉だけど、あたしは必死に玲汰先生へと届ける。


