その体勢のまましばらく玲汰先生の家の前にいると、
「……さむっ」
玲汰先生は体をブルッと震わせた。
あたしはいきなりのことに驚いて、そっと玲汰先生から離れる。
「………あっ」
離れた時初めてきちんと見た玲汰先生は、薄い長そでのTシャツに短パン姿で、長そでの袖は織ってあった。
しかも、よく見たら髪も濡れていて。
「……お、お風呂上がりですか?」
「……お風呂上がり、だった」
「……ごめんなさい」
いくら気づかなかったとはいえ、すごい罪悪感を感じる。
気づこうと思えば、抱きしめられていた時に「服が薄いな」とかなんとか気付けただろうから。
「……別に。だってお前、泣いてるじゃん」
玲汰先生の言葉に、思わず目を見開く。
……ああ、そうだった。
「……玲汰先生って、意外と紳士だよね」
「はっ?いつの俺と勘違いしてんの?」
玲汰先生はそう言ってとぼけるけど、絶対にそうだ。
学校での玲汰先生は紳士そのものだけど、本当の玲汰先生だって結構な紳士。
そう確信したあたしは、クスッと小さく笑う。
一番最初にこの家に訪れたときも、確かそう思った気がするな。


