本当はエレベーターもあるんだけど、わざとゆっくり行って少しでも宮城先生の家に着くのを遅くしようと思ったから、あたしは宮城先生の家があるマンションの階段を上った。





 恐い。


 もしもあたしの予想が当たったら……?

 考えるだけでも恐くて、足が中々進まない。





 ああ、こうなるんだったらエレベーターに乗った方が良かったかも。

 だって、エレベーターはあたしがどんなことを思っても、無視して上がっていくから。




 やっとのことで5階まで来たあたしは、宮城先生の家、506号室を目指す。



 あの日、宮城先生の家を知った時は嬉しかったなぁ。

 こんなことに使うなんて、思ってもいなかったけれど。


 なんて、思い出したり。





 そしてついに……







 この角を曲がれば、宮城先生の家があるという所に来た。

 あたしはまた恐くなって、立ち止まる。


 この角を曲がった先、全ての真実がある。

 あたしの心にかかるこの黒い雲の行く末も、この角を曲がると決まる。





「すぅ……」

 ゆっくり息を吸い込んだあたしは、「よしっ」気合を入れて角を曲がった。