あたしはドアに掛けている手に力を込める。

 お母さんの言葉に傷ついている心を、隠すために。




 痛い。痛い。



 いつも、聞きたくない時に限って痛くて胸に刺さるセリフを言うよね。


 だけど、今回は嬉しいよ。

 だって、あたしが最低な人間だって思い返させてくれるから。




 お母さんに背を向けたまま、あたしは玄関のドアを開けた。











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 悲しくて、辛くて、苦しくて。


 なんとも言えないような感情が複雑に交差する。




 走って、走って、走った。


 切ない胸の痛みが、汚れたあたしを包み込む。



 あたしの中のなにかが壊されるような気がして、それが怖くて。


 だから、玲汰先生の家に向かいながら、まるで自分に言い聞かせるかのように唱え続けたんだ。





 あたしは最低な人間なんだ、って。