「やめてっ!」



 ガバッとあたしは飛び起きた。


 背中にはびっしょりと冷や汗を掻いている。




 前見た夢とはまた違う感情に抑えられる。




「……な、つき」


 正直、今回の夢の方が怖かった。


 だって、あたしを恨んでいるはずの夏希があんな優しい言葉をかけたから。




 胸が苦しくて、痛かった。



 あの日、夏希が飛び降りる前に言った言葉と同じ〝大好き〟。

 夏希に、そんな風に言ってもらえる人間じゃないのに。



 あんなことを言われたら、どうしたらいいか分からなくなる。



「……見なきゃ、よかった」


 こんな夢ならば、見たくなかった。



 あんな優しい夏希を殺した自分に、怒りを覚える。



 でも、それよりももっともっと大きい感情が、あたしの心を掴んだ。


 切なくて、悲しい感情。

 でも、何処か優しくて温かい感情。






 そして、あたしが目を背けていた真実に辿り着きそうな感情だった。