「ここ……」
先生が手を離したのは、あるマンションの5階にある誰かの家の前。
インターホンの少し上に、【506】と、部屋の番号が書かれている。
その下に、【宮城】と手書きで書いてある標識が。
先生は鍵をポケットから出して、その家の鍵を開けた。
こ、ここって……
「……入れ」
先生はドアを開けると、そのドアを押さえながらあたしに言った。
「え、でも……」
「じゃあ、帰るか?」
「うっ……」
先生の冷たい目が、胸に微妙に刺さった。
……仕方ない。
「お、邪魔しまーす……」
家の前は狭いけど、先生が端に立っているため、あたしは楽に家に入れた。
意外と紳士……。
あたしが入ると、先生も入ってきて、ドアが閉まった。


