先生はあたしを睨んだ。


「俺、眠いんだよ。」


「けど……帰りたくない」



 あんな家には。

 あたしは俯いて、涙を必死に堪えた。



「……ったく」


 先生は面倒臭そうにそう言うと、あたしの頭に手をポンッと置いた。



「え……」


 あたしは頭を上げる。

 先生は、呆れた様に笑っていた。




「……今日だけ、特別」


 そう言うと、先生はあたしの手を掴む。


「あ、あのっ」


「行くぞ」



 そして先生は、そのまま歩き始めた。


 ……あたしの家とは、反対方向に。





 あたしは、よく分からないまま先生について行った。