私が、アンタを嫌いな理由。






   1つめ、誰にでも優しいところ。



   2つめ、何も苦労してないところ。



   3つめ、思わせぶりな発言をするところ。



   4つめ、私のことを私よりも分かってるところ。



   5つめ、アンタの家のご飯がおいしいところ。



   6つめ、顔が美形なところ。



   7つめ、私よりも運動神経がいいところ。



   8つめ、人から好かれるところ。



   9つめ、その笑顔。




   最後に




   私の気持ちに気づいてくれないところ。






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気が付けば、いつもアンタは隣に居た。






「でさぁ、昨日母さんが.....って、カンナ聞いてんのかよ!?」





  へへっとこっちに向けるその笑顔。


  コイツは、津軽コウ。


  で、私が桂城カンナ。


  腐れ縁。  とも思いたくない相手。





「あー....うん。聞いてる。あと、その気持ち悪い笑顔こっちに見せないで。」



「なっ!?気持ち悪いとは失礼な!!」





  ぶーぶー言いながらも、爽やかにへらへら笑ってるコイツを見ると、


  妙に、イライラするんだよね。




「あーもう、煩い煩い。ちょっと黙って。今本読んでんの。」



「おっ、また本変えたのかー。お前って読むの早いんだな。」



「.....人の話聞いてた?」



「やっぱ、カンナは頭良いもんなー。」




   うんうん。と、一人で勝手に納得してるコイツは本当に馬鹿っぽく見える。



  昔から、そうだった。



   人の周りをうろちょろしては、ちょっかい出して。


   それでも、アンタは憎めなくて。


   そういうところが、本当に嫌いで嫌いでしょうがなかった。


   


   別に家が近いとか、親同士が仲良いとか、そんな繋がりはまったくなくて、


   ただ単に、アンタが絡んでくるから一緒に居るだけ。






「ってか、アンタ自転車通学じゃないの?」





   少し、怒りをこめて尋ねると、アンタは嬉しそうに笑ってこう言った。




「今日さ、部活無いだろ?だから歩いていこうと思ったんだよ。」




       お前と一緒になっ。






    ほら、そうやって思わせぶりな発言をするところ。

   

    本当に鬱陶しい。イライラする。ムカムカする。



「帰りも一緒に帰ろうぜ。」


「....好きにすれば?私、HR終わったら即行で帰るから。」


「おうっ、同じクラスなら何も問題無いな!」


「はぁ....。」



  今日は始業式。

  


  中学3年生。


  めんどくさいクラス替え、人が密集する全校集会、うざい自己紹介、

  長いHR。




  挙げればキリがない。



「つかさ、よく考えたら2年間ずっと一緒だよな。小学校ではかすりもしなかったのに。」



「...そうだったっけ....?」



「おまっ...ほんと、認知症か!!」


「うるさい、そもそも認知症っていうのは....」




  と言いかけたところで、




「あーもう、煩い煩い。今本読んでんの。」


「....は?」


「カンナの真似っ!!」




  またまた笑うアンタ。




「....馬鹿みたい。先行くから。」



  スタスタと歩くと、後ろから 待てよーー!!という声が聞こえたけど

  無視無視。



  てか、何でさっきまで一緒に歩いてたんだろう。


  まぁいいや。とりあえず、今は学校まで歩く。それだけ。





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「ったく、置いてくなよ!」




「煩い。声がでかいよ馬鹿。あと、置いていってない。

  ちゃんと、先行くって言ったから。」




「何だよその屁理屈!!」




  これ以上コイツに構ってると面倒な事が起きる。


  私は昇降口の方に歩いて、クラス番号名前が書かれた無機質な紙をもらった。





「ありがとうございます。」




「今年も、頑張れよ!スポーツに勉強にピアノに絵画に...本当にお前は素晴らしい


  生徒だった!!」




  去年の担任だった熱血教師。比較的この教師は好きな方だった。





   「先生、今年は担任持たないんすか。」




  ひょこりと、私の右肩から顔を出す馬鹿。




「おぉー、津軽か。まぁな、最近嫁さんが産気づいてな。ちょっと遠慮したんだわ。

 それとお前、まだ数学のレポート提出されてないぞ。」




「あっはっはっは!まぁ良いではないすか!過ぎた事なんだし。」




「残念だったな津軽。学級担任は持たないが、教科担任は持つぞ。

 一学期の成績が楽しみだなぁ」



「....いい加減離れてくれない?」



  ずっとこの体勢で居るつもりか馬鹿。


「ははは!!相変わらず仲良いみたいだな!

  んじゃ、今年も仲良くやれよ?」



  言葉を疑った。



「まさか....」


「お前ら、二人揃って3年1組だ!!」





  もう、唖然とするしか無かった。