後ろから声がしたかと思ったら、すぐに隣にグラスが置かれ、亜子に付き合って行った美容室の担当さんが腰をかけた。
彼は怪しく微笑み、グラスをあたしに向け『乾杯!』を待っているようだ。
あたしは残っていたカクテルを一気に飲み干し、空になったグラスを彼に向け、
「もう帰るとこなので。」
と、ニッコリ笑って言う。
「それは残念だ。」
「せめて一杯くらい奢らせて欲しいな…ダメ?」
そんな哀しそうな顔で何なの?
そして、いつもなら『タダ酒だ!』と喜ぶとこなのに、何で嫌なんだろう、あたし。
この人だから?
「一杯だけ付き合ってよ。」
「-…水無月ちゃん。」
「!!!???」
あたしが無言で少し考えていると、カラカラと氷がグラスに当たる音をさせながら、、真剣な顔で彼が言った-…
「…名前、知ってたんですね。」
少し酔いが醒めた気がした。
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