「あれ?みなみなも染めるの?」
「うん、せっかくだから。」
気を使ってか亜子の隣にしてくれたので、カラーの待ち時間も退屈しなさそうだ。
亜子もあたしも髪を濡らし、整髪料やらを洗い流してもらった。
人にしてもらうシャンプーはどうしてあんなに気持ちいいのだろうか。
「“みな”ってお名前なんですか?」
大橋さん、が混ざってくると、小首を傾げて亜子が返す。
「みなみなの名前は…「そうです。」
だが言い切る前にあたしはキッパリハッキリと言い放つ。
“水無月”という名前は嫌いじゃないのだが、名前を言ってリアクションに困る姿や、「変わった名前だね」という在り来たりな反応ばかり見てきたので、あまり名乗るのが好きじゃないのだ。
『ふーん、だからそんなにアンニュイな空気をいつも纏ってんのか!』
『なんてな!似合うじゃん。』
一人だけそう言ってくれた。
名乗らない本当の理由は、その人だけが特別であって欲しいのかもしれない。
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