「その夢ってのがさ、ひなのなくしてる記憶って事はないのか?」


「あー、……どうだろう?」



昨日の説明でひなの言う事を信じてくれたらしい亮介は凄い。


普通なら、何言ってるんだかと鼻で笑われる様な非現実的な話をしたのだから。


それでもひなの言うことを信じてくれるのは、いつも助けてくれる亮介だからなのだろう。



協力者が亮介で良かった。



「怖い夢ってのは、どんな夢なんだ?」


「あっ、えーっと。私の前に血だらけの女の人が倒れてる…のかな。そういう夢」


「血だらけの女の人か……」


「うん」



血だらけの女の人が倒れてるというのは本当の事。たが、その時の自分の両手が血で真っ赤に染まっているという所は言わなかった。


亮介には言えなかったというのが本音だろう。


この夢がなくしている記憶だという可能性はかなり高いと思う。


昨日も今日もこの夢なのだから。


だが、この夢が実際にあった事だという風になると考えたくない最悪の展開に陥る気がする。


自分の目の前に血だらけの女の人が倒れてるなんて普通にある状況じゃない。


しかも自分の手も恐ろしいほどに真っ赤。


もしかしたら、その女の人を真っ赤な血で染めたのが自分かもしれないと思ってしまったのだ。



「何かそういう事件に巻き込まれてたのかな?亮介は3年前にあった事件とか覚えてる?」



巻き込まれてしまったという可能性もなきにしもあらず。


そう思って誤魔化し半分で口にしたのだが、亮介は困った様な顔をして「事件かぁ……」と呟き唇を尖らせる。