仲良し8人組




それでも、真由美を見ながらひなが口を開いた。



「真由美!真由美!ひなだよ!」



真由美は園児と共に楽しそうに笑っていて、ひなの必死な叫び声は届いていない。



聞こえていない。


そうさっき気付いた筈なのに、知り合いに出会えば少しの希望にかけてみたくなる。



「真由美!……気付いてよ!」



ガシャガシャと両手でフェンスを揺らすが、何も変わらない。


仲良く話していた友達の真由美でさえ、自分に気付いてくれないのが苦しくて、悲しい。


ツーっとひなの頬を伝う涙。


その時、


「お嬢さん」


その言葉と共に後ろからトンッとひなの肩が軽く叩かれた。



「えっ!?」



思わず後ろを振り返ると、そこには40代位のおじさんが立っている。


無精髭に、白髪混じりの肩までのボサボサの髪。


服装は、ズルッとしたジャンバーを羽織っており、だぼだぼのズボンを履いているその男性。


その風貌から判断すると、ホームレスというイメージがしっくりくる。



「お嬢さん、何をそんなに叫んでるんだい?」


「……えっ…?」



このおじさんには何でひなが見えているのか?


そんな疑問が頭を駆け巡る。



誰にも姿が見えなくて、誰にも声が聞こえない。それに気付いた所なのに、それも間違い?



ゴクッと息を呑むと、じっと目の前のおじさんを見つめる。


おじさんの目は間違いなくひなを見据えていて、ひなの後ろの誰かに声を掛けている訳じゃない。


それに、こんな場所でさっきまで叫んでいたのはひなただ一人。