ひなの知っている年号と違うのだ。
見間違えかと思いガバッと顔を新聞に近付けて再度確認するが、ひなの見間違えではないらしいその数字。
慌てて椅子から立ち上がると、目の前にある何種類もある新聞が置かれている木で出来たラックへと向かう。
今手に持っている新聞と違う種類の物を確認してみない事には真実が分からない。
ドクドクドクと早鐘を打つ心臓は、ひなの知らない真実を身体で感じ取っているかの様だ。
年号が間違っている。
それは、この新聞社だけのただの印刷ミスかもしれない。
持っている新聞を一度ラックに戻すと、別の新聞へとゆっくりと手を伸ばす。
僅かに震えるひなの指先。
しかし、そんな震えで見るのを止めるという行動になる事はない。
今のこの状況を少しでも把握したい。そうしないと、いけない気がする。
その為には、見たくなくても見なくちゃいけないんだ。
そんな気持ちがひなの頭を占めているのだから。
手に取ったのはスポーツ新聞だったらしく、表紙を飾る野球選手がバットを振る様の写真のカラーが華やかだ。
でも、ひなが見たいのはその野球選手でも、その記事でもなくて。
スーッと視線をその写真から上へ上げていく。
「……何で、…3年も……経ってるの?」
ひながそう呟く。
と、同時に凄い勢いで、次から次へと近くにある新聞を全て確認していく。
ただの印刷ミスなんかじゃない。
そう思うには十分過ぎる証拠がここにある。
全ての新聞の年号がひなが記憶している年号から3年も経っているのだ。


