だから、いくら声を掛けても反応が無い…っていうこと?
もしかして……。
もしかして……、私……。
…………生きてないの?
そこまで考えた所で、ひなの背中にゾゾッと寒気がやってくる。
それにブルッと身体を震わせながら、身を縮込ませるその行為は明らかに今のこの現状に怯えているのが見てとれる。
自分がもし死んでいるのなら、全ての人の視界に映らないのも納得がいく。
声が聞こえないのもしかりだ。
ひなが不安に揺れる瞳で自分の爪先から腰までをゆっくりと見ていくが、その目が自分の持っている鞄へと移る。
朝、自分の部屋から持ってきた鞄。
幽霊が見えないというのは分かるが、その幽霊が持っている物まで見えないのだろうか?
物が宙に浮くという超上現象が起こるという事は物自体は普通は消えないんじゃないだろうか?
それともこの鞄や生徒手帳のカードはひな自身の物だから見えない?
整理の出来ていない頭のままで、兎に角思い付いた事を行動に移そうと、目の前で一切開こうとしない図書館のゲートに足を掛けると、そのままの勢いでゲートを飛び越えたひな。
着地と共に、ドンッ!と大きな音が響くが、やはり誰もそんな音は聞こえていないらしい。
流石にずっとその状態が続いているからか、ひなももうその事を気にする事もなく、歩を進めていく。
ひなの向かう先にあるのは、新聞と雑誌の置かれたスペースだ。
当然、その周辺にもバラバラと生徒達が行き交っている。
自分の持ち物でない物を今のひなが持ち上げたら……。
ひなはその答えを見付けようとしているのだ。


