「まあ、寂しいけど、新たな旅立ちってやつって思えば良いよな!」
「楽観的」
適当にその場を締め括ろうとする馬渕勝也(マブチ カツヤ)に、冷静に突っ込む向井卓(ムカイ スグル)。
この光景はいつもの事だ。
いつもの事だった。になるのかもしれない。
明日からはもう彼等は皆クラスメートではないのだから。
彼等を見て少し切なそうに笑うひなの頭にふわっと乗せられた亮介の手。
優しくひなの頭を撫でるその手の温もりを感じてか、ひなが一瞬キュッと目を瞑った。
トクトクと早くなる心臓が煩い。
顔が熱い。
そんなひなの横顔を見て優しく微笑む亮介。
二人の間に流れる空気が少しだけ、本の少しだけ熱を帯びている気がしているのはひなだけだろうか。
「卓は普通過ぎる!」
「何か問題でも?」
そんな二人を他所に、勝也と卓の言い争いは続く。
この教室には8人もいるのに、誰もそれを止めようとしない所が、やっぱりいつもの事…という事だ。
が、そんないつもの事に割って入って来たのは天然パーマで常にアフロの様な髪型になっている八代太一(ヤシロ タイチ)だ。
「イェイ!イエーイ!皆、もっと楽しく行こうぜー!イェイ!」
彼の無駄なテンションの高さは異常だ。
思わずさっきまで涙が溢れていたひなから苦笑いが漏れる。
「太一はウザい」
「ウザいって誉め言葉として貰っとくぞ!イエーイ!」
今の太一には卓の毒舌も通じないらしい。
「ハハッ。皆と一緒にいるのはほんと楽しいよ!」
にっこりと目を細めて笑い声をあげてそう言う中津明(ナカツ アキラ)。