ただ、風情があるのは外観だけで、中は近代的だ。
電子パスとなる自分の生徒手帳のカードで、図書館の中に入れる様になっている。その為、この図書館に入れるのは生徒と、この短大に勤めている人のみ。
建物の中に入ると直ぐに駅の改札の様な、図書館への改札が待っている。
ひなは自分の鞄から生徒手帳のカードを取り出し、それを入り口の鍵となる認証システムへといつもしているようにかざした。
が、図書館への道が開かない。
鍵が開かないのだ。
「な、…何で!」
苛立つ気持ちが溢れ出しそうになりながらも、何度も生徒手帳のカードをかざす。
なのに、機械は全く反応しない。
立ち往生しているひなに図書館員が気付くか…とも思ったが、そんな期待も一瞬にして消えていく。
さっきの教室と同じ様に誰一人としてひなを見ていない。
ひなが立ち往生している事等には気付いていないのだ。
「あのー!すみません!」
カウンターに座っている司書の女性に顔を向けそう叫ぶも、やっぱり先程と反応は同じ。
ひなの方へ顔を向ける事がない。
「何で……」
何で誰も気付いてくれないの?
何で誰も私の方を見ないの?
何で……、私が見えていないの?
ひなもひなの声すらも誰にも届かない。流石にもうひなもこの状態から目を逸らす事なんて出来そうにない。
手紙に書かれていた『消えかけた存在』というのが本当の事だったとしたら。
今のここにいる人達には私の姿が見えていないって事になるの?


