その校舎は、やっぱり昨日と全く変わってなくて、周りを見ても短大の校内はどこも変わっていない。
森園教授だって見た目は全く変わってない。
でも、講義を受けている生徒は全員変わっていて。
もしかしたら、今この校内を歩いている人達も変わっているのかもしれない。
……それとも。
それとも、……私が変わった?
そんな恐怖に囚われて、ひなが視線を落とし自分の両の掌を見つめた。
「キャッ!」
その悲鳴と共に、顔を真っ青にして手についている何かを落とす様にぶんぶんと勢いよく両手を振るひな。
が、ひなの手には何もついていない。
ついていないのだが、一瞬だけひなには見えたのだ。
真っ赤に染まった自分の掌が。
夢で見た、…あの掌が。
頭に焼き付く様な真っ赤に染まった掌の映像を忘れる為にも、これ以上考えない様にする為にも、止めていた足を再び動かし始める。
気のせい。…気のせいだよ。
何だか疲れてるんだよ、今日は。
そ、…そうだよ。静かな図書館でも行って落ち着いてから周りを見たら何も変わっていないかもしれない。
きっと、そうだ……。
目的もないまま動かしていた足を校内にある図書館の方へと向ける。
徐々に近付いてくる図書館。
この短大の建物は全てが赤茶色でレトロな雰囲気が漂うものばかり。
だからか、この図書館もなかなか風情のある建物となっている。


