仲良し8人組




次第に溜まってくる涙をもう堪える事も出来ず、涙の粒がひなの頬を伝っていく。


太陽の光でその粒が宝石の様にキラキラと輝いているのに、それにすら誰も振り向かない。


ひなの目に映るのは異様な光景だ。


誰にも自分の存在を認めて貰えないという異様な光景。


グッと歯を食い縛って、手の甲でグイッと涙を拭うと、さっきまで座っていた席へと足早に歩を進めた。


そして、席の前まで来て乱暴に鞄を掴み取ると、そのまま一直線に駆け足で後ろのドアから教室を出た。


ひなが勢いよく開けた後ろのドアがバンッ!と大きな音をたてた瞬間に、森園教授がそのドアへと顔を向け、


「あら?風かしら?」


不思議そうな顔付きで首を傾げそう言う。


その言葉は教室から駆け出て行ったひなに届く事はなかった。








ーーーーー


勢いよく走ったせいか息が切れる。


間違いなく逃げた。



さっきまでいた教室のあった校舎から外に出ると、走るのを止めて切れ切れの息を元に戻す為にゆっくり歩を進める。


どこに向かっているという目的もなくただ足を動かすだけ。



それでも、さっきのあの空間に居たくなかった。


自分が存在していないかのように振る舞われる。


それが、……酷く怖い。



怖さからやってくる寒気にひなはブルッと肩を震わせると、そっと足を止めて後ろを振り返った。


ひなの目に映るのは3階建ての赤茶色のレトロな雰囲気の校舎。