「何かその考えでいくと、溶けて消えるって言うのは死ぬって事。だとしたら、これ怖い話でも何でもないんじゃっ!」


「殺されたらそりゃあ、…死んじゃうよね」


「死んだら何かが起こったって分かる訳ないんだから、これ意地悪問題だよ~。騙された~」



頭を両手で抱える真由美にひなは苦笑して「だね」と相槌を打つ。


それ以外の言葉が見付からないというやつだ。



真由美の怖い話の失敗は今回が初めてかも…。



それにひなはホッとしながらも、目の前であからさまにへこんでいる真由美の肩を励ます意味も込めて優しく叩いた。









ーーーーー


今日の講義を全て終え、左手にしていた腕時計を確認するひな。


時計の針は午後5時を差している。


机の上に出していた筆記用具等を乱雑に鞄の中に放り込むと慌てて席を立つ。



「ひな。また明日ね!」



真由美がひなへと向かって微笑むと、ひらひらと手を振る。


それに、


「うん。明日!」


そう言いながら手を振り返すひなの足は、既に教室のドアへと向かっている。


実は30分程前に亮介から『着いたから』というラインが届いていたのだ。


思っていたよりもかなり早い時間に亮介の仕事が終わったらしい。


早足で待ち合わせの校門へと向かう。



その足が軽いのは、きっとこれからの事が楽しみだから。


8人で会う約束がひなの気持ちをワクワクさせているから。



ひなの目に校門が見えたと同時に、赤茶色の門に背を預けて凭れている男性も視界に入る。