伏見がサトシという人物に殺されていたら、今ここに居るわけがない。
が、現実では起こりえないと思っていた事が起こったのかもしれない。
理解し難い伏見の文を、日下部はそう思う事で先へと進める。
この先に伏見が死んでしまった経緯が書かれているかもしれないと思ったからだ。
さっきの文から数ページはサトシへ謝りの言葉が連なっている。
だが少しすると、突然また謎な事が書かれていた。
『最近、頭痛と共に声が聞こえる様になった。
女性の声だ。何と言っているかまでは聞き取れないが、その声が聞こえると背中がゾッとする』
声?
日下部は少し首を傾げながらも続きを読む。
『段々とハッキリと聞こえる様になってきた女性の声。
この声に私は聞き覚えがある気がする。どこで聞いたことがあったのかは思い出せない』
ペラッとページを捲る音が響く。
日下部の目はもうノートに釘付けだ。
『女性の声が誰の者か思い出した!最初の被験者の一人だった女子高生のものだ。間違いない!ただ彼女は殺されてしまった筈だ。
彼女の幽霊かなにかが私に訴えかけているのだろうか。
確か彼女の名前は、辻 杏奈(ツジ アンナ)だったと思う。彼女は私に何を伝えたいのだろう?』
この辺りからは日記の様に書かれている伏見の文。
数日前に書いたものなのかもしれない。
『辻 杏奈とボヌール社の事について少しだけ調べてみた。
そういえば、ボヌール社は私の話を聞いたからか、未来へとタイムスリップしてしまう事への対応策を考えていたらしい。


