「すまんが、失礼するぞ」
その言葉と共にビニールシートの入り口を捲り上げると、その中へとスッと身体を滑り込ませる。
その瞬間、目に飛び込んできたのは白目を剥いて倒れている伏見だ。
伏見を以前に見た時から、年月が経過しているが彼の顔は忘れない。
いや、印象的過ぎて忘れられないのだ。
人が溶けた!と言う彼が。
思わず「なっ!」と言葉を漏らすが、直ぐに伏見に駆け寄ると脈を測る。
脈は無い。
息はしていない。
伏見が……死んだ。
そこからは日下部も驚く程に物事が進み出す。
上層部がここへやって来るという田村からの連絡が終わると、眉間に皺を寄せる日下部の目に映ったのは段ボールのテーブルだろう物の上に置かれている大学ノート。
開かれたままのそのノートの中に、伏見が何を書いたのかが気になって近付いていく。
そしてそっとそのノートを手に取った。
パラパラとページを捲りながら内容を斜めに読んでいく日下部。
「ほーお。興味深いな」
思わずそう独り言を漏らすと更にノートを捲り目を通していく。
『そうしていれば、私はサトシを救えたかもしれない。
あの記憶を変えられたかもしれないのに。
私が、……私がサトシに殺されるなんて事自体が起きなかったかもしれないのに……』
未来やら何やら書かれていて、最終的に意味が分からないその文。


