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河川敷に並ぶ段ボールの家。
そこに住んでいる者達は、住民票が無かったりと身元を証明するものを持っていない者が殆どだ。
「こっちだよ」
「ああ。すまんな」
薄汚れたボロい布のような服に身を包んだ男が案内をする様に前を歩く。
その後ろに付いていくトレンチコートを着た男。
日下部だ。
今の日下部は上から言われた仕事をしているわけではない。
独自で調べていた事の情報を手に入れ、ここへやって来たのだ。
日下部が探していたのは伏見隆の情報。
その情報を提供したのが日下部の前を歩く男だ。
この辺りでは、シゲさんと呼ばれているらしい。
どうやら、このシゲさんと伏見は仲が良い友達の様な関係なようだ。
だからか、日下部は情報を貰う代わりに伏見を病院へ連れていくという約束をしているのだ。
シゲさんの話では最近伏見を酷い頭痛が襲っているらしい。
何個か並んだ段ボールの家の内の一つの前で足を止めたシゲさん。
「ここに居るんだな?」
「ああ。多分あんたが探してる人だ」
日下部の問いにも視線を逸らす事なく真っ直ぐと日下部の目を見つめるその姿からは、嘘を吐いている様子はない。
「助かった」
そう日下部が告げれば、しつこい程伏見を病院へ連れていく約束の念を押された。
約束は守る!
それが日下部の信念だ。
それを曲げる事は無いのだが、どうやらこういった河川敷に住んでいる彼等にとって警察というのは約束を破る印象が強いらしい。


