そこに、明るいピアノ演奏の音楽が印象的なコマーシャルが流れ始める。
《全ての人が幸せで平和な未来の為に!》
前からよく見るコマーシャルだったが、今は1日に10回以上はみている気がする。
それだけの力があるという事なのだろう。
「また、コマーシャルしてるね」
フフッと笑って亮介にそう告げれば、亮介は少しだけ照れた様に頬を染める。
「大手だからな」
そんな言葉と共に。
「流石、亮介のいる会社だ!」
「だろ」
亮介が就職した会社は、かなり大手のボヌール社だ。
だが、その事をひなが知ったのはついこの間。
「ねえ、何で亮介は会社の事ずっと黙ってたの?」
「えっと……」
口ごもる亮介の顔を覗き込み、ひなが「ん?」と首を傾げる。
それに亮介が眉を下げた。
「あー、……コネ入社なんて格好悪いからさ」
コネ入社。
それが亮介のネックになっていたのだろう。
ただ、ひなにとっては亮介が感じるように格好悪いという感覚が分からないからか、少しだけ不思議そうに首を傾げるだけ。
「別に格好悪くないのに」
「何か格好悪いんだよ!」
「ふーん。そういうもの?」
「そういうもの。社長の藤井さんと知り合いだから就職って、何か頑張ってねぇ感じだろ」
「ん~、そんな事ないと思うけど。龍の面倒を見ている姿が会社に役立つって思って貰えたって事でしょ?」
「一応な」
ひなの言葉に照れ臭そうに鼻を人差し指でポリポリと掻く亮介。


