「勝也と瀬野貴文が……共謀してたって事?」
「そうよ。瀬野貴文は私が間違えて勝也の名前を言った瞬間、大声で笑いながらそう言ってた」
勝也が梓を騙した。
信じられないけれど、強がって話すくせに今にも泣きそうな顔をしている梓を見れば分かる。
これが真実なのだと。
「あ、……明もそれに関わってたの?」
「明はそれには関わってないけど、許せないから」
許せないと断言する梓の目には憎しみが滲み出ている。
「明が勝也と……」
関係があった事が気に食わなかったのかを訊こうとそこまでひなが口にした時、被せる様に梓が口を開く。
「嫉妬じゃないわよ。勝也が女遊びが酷いのなんて知ってるし」
「じゃ、…じゃあ何が?」
「ひなは誰だった?未来の世界での協力者」
「それは…」
屈んだままの体勢のひなを上から見下ろす梓。
そんな梓に冷たい目を向けられながらそう訊かれ、思わずひなは言葉に詰まってしまった。
正直に亮介だと答えたら、亮介に何か起こるんじゃ……。
そう思ってしまったのだ。
しかし、その質問は梓にとっては訊いても訊かなくても良かったらしい。
「まあ、誰でもいい事だけど。明はね、……私にとっての協力者だったの。なのに、……小心者の明は周りの人と一緒に私が見えていない様に振る舞った。そのせいで結局、私はずっと一人」
「そ、…そんな」
ひなにはずっと亮介が一緒に居てくれた。
必ずしも協力者が協力してくれるとは限らないんだ。
梓は誰にも気付いてもらえない世界で記憶を取り戻すまでずっと一人だったんだ。


