仲良し8人組




「ひなも同じ体験をしてるんだから」



梓のその言葉がひなの胸に突き刺さる。


同じ体験。梓も3年後の世界に行っていたという事だ。


誰にも見てもらえない。


誰にも声すら届かない。


あれは体験して初めて、とてつもない恐怖を感じる。


一人という恐怖は底知れない。



「そ…だけど……。梓、勝也の事が好きだって……言ってたじゃない!」



何で勝也を?


何で好きな人を?



例えあの恐怖から逃れる為だとはいえ、その疑問は消えてくれない。



「好き…だったよ。でも、好きでも許せない事はあるの。亮介のいるひなには分かるわけないと思うけど」


「許せない事って?」



ひなのその問い掛けに梓は一瞬ギュッ唇を噛んだ後、眉間に皺を寄せ、


「命を……売られた事」


そうポツリと言葉を漏らす。



「い、……命を!?」



目を見開いて驚くひなを梓が馬鹿にしたようにふっと鼻で笑う。



「瀬野貴文。ひなは知ってる?」


「今朝、殺人で逮捕されたって。ニュースで」


「あの人、勝也の親戚」



淡々と話す梓。


ここで瀬野貴文の名前が出てくる事からして、瀬野貴文が梓を殺したのは覆る事のない事実。



「夜中に突然勝也からラインがきたのよ。今直ぐに中学校の近くにある廃屋に来てっ!!ってね」


「廃屋って……」


「急な話でも、好きな人からなのよ。……行っちゃうでしょ。そこに殺人犯が居るなんて思わないし」



梓が自嘲気味に笑うが、その姿がひなの目には痛々しく映ったのか梓から視線を逸らした。