仲良し8人組




最初から過去は、……変える事が……出来ないんだ。


勝也と明を助けるなんて事、出来なかったんだ。



タカシのノートに書かれていた『悔やまれる』という言葉。


それは、意味がなかったのだとここにきてハッキリする。


タカシはタイムパラドックスを気にしていたが、そんな事は絶対に起こらない様になっていたんだ。



ペタッ。


ペタッ。



徐々に近付いてくる足音。


それに合わせてひなの心拍数が悲鳴をあげる。



今、私を殺そうと一歩ずつ近付いて来ているのは、……誰?


誰?


……誰なの!?



思わずそう叫びそうになった瞬間、アナウンサーが言っていたニュースの内容がひなの頭を過った。



ああ。……もう答えは出ていたんだ。


気付かないふりをしていただけ。


私を殺そうとしている人が瀬野貴文に殺された3人目だと思った瞬間から分かってたんだ。


当て嵌まる人なんて一人しかいないって。


私が名前を言ってしまったら相手が消えてしまうから。


消えて欲しくなかったから。


一緒に居たいと思ってたから。



ペタン。



ひなの真後ろで止まった足音。


後ろには確かに人がいる気配がする。


振り向きたくても、ひなの首は動かない。


スッという空気を切る音と同時に、食器棚のガラスに映る月の光を浴びてキラリと光るナイフ。



振り下ろされる!!



そう思ってひなは目をギュッと瞑った。


が、痛みがやってこない。


そろりと目を開くと、ナイフは未だに振り下ろされていなかった。