「太一が人数分のこの懐中電灯を持って来てくれたんだよ。教室に行って懐中電灯をもう一つ借りてから明を探すのを手伝って貰えるかな?」
「おう。探すよ!」
卓の言葉に明るく答える亮介。
普段ならひなも、私も探すね。と微笑んで言って一緒に太一のいる教室に行くところだろう。
だが今は違う。
無理矢理張り付けた笑顔で口を開く。
「私、……先に探しに行くよ!亮介は教室に行って太一に懐中電灯借りてきて!」
探すのは探すのだが、亮介と一緒には探しに行かない。
常に亮介と一緒に行動していたひながこんな風に言うのはかなり珍しい事だ。
だからか、
「えっ!?」
ひなの言葉に亮介が思わず声をあげた。
それに、ふふっとわざと笑って、
「私は女子しか入れない女子トイレとか探しておくから!」
明るくそう言うひな。
当然ひなにそう言われたら亮介は、「お、おう」と言う事しか出来ないのも知っての事だ。
「じゃあ、……後でね!」
「気を付けろよ!何かあったら連絡しろよっ!」
本気で心配してくれている亮介に思わずひなの頬が緩む。
凄く大切な人。
だから、……
だからこそ、……一緒に明を探しに行けない。
「亮介は本当にひなに過保護だよね」
そんな卓の言葉と共に亮介と卓が、ひなへ背を向けて1階へと向かう為に歩き始めた。
二人の足音が段々と遠ざかっていく。


