「あー、来てる筈なんだけど、何処かに行っちゃったみたいでさ」
嫌な予感というのは結構な確率で的中するものだ。
「居ないのっ!?」
「ああ。だから今皆で探してる所だよ」
突然卓へとグイッと顔を近付けて聞き返すひなに卓も驚いたのか、少し眉を下げ困惑気味にそう答える。
「皆って?」
「夢と梓と僕。それとさっき来た太一は教室に待機中。勝也は遅れるって連絡があったけど、亮介とひながね」
「あー、だね」
卓の言葉に苦笑いを漏らすひな。
ひなと亮介は遅れるという連絡はしていないわけだから誰かが待機をしているのも当然だ。
ただ、勝也からの遅れるというラインについては一言も触れない。
触れてはいけない。
勝也の遅れるというラインを送って来た人物が誰か分からないという事は、卓が送ったという可能性もあるのだから。
もしかしたら、卓が勝也を殺した犯人かもしれない。
明が居なくなる前まで、明を責め立てていたのも卓。
それに卓は私達の事を仲良しだなんて思っていない。
明の反応を楽しむ為に勝也を殺したと言われても、あのノートのせいで悲しいけれど信じてしまいそうだ。
そんな卓への疑惑を胸に抱きながら、じっと卓を見つめていると、スッと卓が手に持っていた懐中電灯をひなへと差し出してきた。
「はい。これ」
「あ、ありがとう」
どうやら卓は懐中電灯を二つ持っていたらしい。
ひなが懐中電灯の灯りをつけると、卓が持っている懐中電灯の光と重なり、まだ少し薄暗かった廊下が明るく照らされた。


