駆け足のまま階段を一気に駆け上がる。
が、後もう少しで理科室という所で、前から眩しい程の光が二人を襲った。
思わず二人共、バッとその光から目を逸らす。
と、同時に聞き覚えのある声が降ってきた。
「亮介?ひな?」
段々と近付いて来る人影は女性よりも大きく、そして、声も眼鏡へと手を持っていく仕草も間違いなく卓のもの。
「卓…か?」
亮介がそう訊いた後直ぐに、卓が二人の前へとやって来た。
「やっぱり、亮介とひなか。遅かったんだな」
「わりぃ。色々あって」
「ふーん。色々ね」
前からよく聞いていた様な会話なのに、思わずビクッとひなの肩が揺れる。
3年後の世界で会った卓の印象が強過ぎて、今の卓の本心が気になってしまったのだ。
卓は、自分達の事を友好的に見ていない。
それをひなは知ってしまっているからか、ぎこちない笑顔になってしまう。
「卓、久しぶり」
必死に張り付けた笑顔でそう言うも、卓は何ら変わりない。
「久しぶり。ひなに会うのは本当に久しぶりだな」
「だね」
きっと卓にとっては、私の反応なんてどうでもいい事なのだろう。
もしくは、この反応すらも面白いと笑うのかもしれない。
そう思うだけでひなの気持ちがズンッと重くなる。
しかし、今はそんな気持ちに身を任せている時間も惜しい程、時間が無いのだ。
「あのさ、卓。明ってもう来てる?」
もう来ているだろう時間だ。
でも、卓とここで会うという事は明と卓が話していた時間はとうに過ぎている。
時間が無い!


