亮介もひなが名前を言わずに直ぐに電話を切った事に困惑顔だ。
そんな亮介にひなが顔を向ける。
「亮介、今直ぐここを出て中学校に行きたいの。だから、今はここで警察に話をしている時間が無いの!訳は聞かないで…欲しい」
そんな風にしか伝えられない。
3年後にタイムスリップした話からしだしたら、長くなり過ぎる。
きっと話をしたら亮介は信じてくれるのも分かっているのだが、何よりも急いで明に会わなければいけないのだ。
名前を言ってここで待ち、事情聴取をされている時間が今のひなには無い。
それが現状だ。
「急いでるって事か?」
「うん」
急いでる。
急がなきゃならない。
それでも、亮介にとっては一番仲の良かった勝也が殺されているのに、こんな事を言うのを申し訳なく思ってひなは少しだけ俯いた。
トントンと亮介の足音が響く。
そして、ひなの手が捕まれたと思ったら、
「俺は何があってもひなの側にいるし、ひなの味方なんだよ。行くぞっ!」
そう言って亮介が部屋のドアへと歩を進めていく。
何があっても自分の事を一番に考えてくれる。
それが嬉しくて、ひなは亮介の背中に向かって「ありがとう」とお礼を言うので精一杯だ。


