トントントン。
2階に行く為に階段を上る音が家中に響き渡る。
特に階段に血が落ちているなんて事はない。
なのに、ひなの胸が騒ぐ。
「おーい、勝也!居るのか?勝手に家に入ったぞ!」
階段を上がりながら亮介がそう叫ぶが、誰の声も返ってこない。
誰も居ないから返事が無いのか、それとも……。
徐々に近付いてくる勝也の部屋。
先に部屋の前に着いた亮介がドアへと手を掛けた。
キィー……
その音と共に部屋の中が少しづつ見えてくる。
「やっぱ、居ねぇか」
亮介のその声だけが響く。
ドアから中をしっかりと確認しようと、亮介の横からひょこっと顔を突き出したひな。
誰も居ない。
その事にホッとして胸を撫で下ろそうとしたその時、部屋の端に置かれていたベッドが目に入った。
ドッドッドッと急激にひなの心臓の音が速くなる。
「亮介、……あれ……」
ひなが指差すのはベッドの上の布団だ。
ベッドの上の布団が盛り上がっている。
まるで人がそこにいる様に。
「あいつ、布団から抜け出す様に出たんだな。形がそのまんまになってる」
呆れた様に軽く溜め息混じりに亮介はそう言うが、果たしてそうなのかというひなの不安は消えてくれない。
スタスタとベッドへと歩いていく亮介の後を、恐る恐るひなが付いていく。
そして、布団へと手を掛けた亮介がバサッと勢いよく布団を捲り上げた。
「キャアァァァァァア!!」
ひなの悲鳴が木霊する。
「な、……何だよ……これ」
亮介は顔を真っ青にさせてそう呟やくのがやっとだ。


