「何かあったのか?」
亮介の優しい声が上から降ってくる。
それにひなはほっと息を漏らした。
「仕事中だったのにいきなり呼び出してごめん」
「どうせ今日は早上がりする予定だったから問題ねぇよ。気にすんな!」
「ありがとう」
「おう」
亮介の言葉に救われる。
「亮介に会いたかったの。亮介に言いたかったのに言えなかった事があったの」
「お、…おう。そっか」
スッと亮介の胸に埋めていた顔をひなが上げると、頬が赤く染まった亮介の顔が見える。
亮介に会えた。
それだけで嬉しくて堪らない位だが、会ったら言いたい事がある。
伝えられなかったあの瞬間が悔しくて、……凄く悔しくて堪らないんだ。
「あのね」
「ん?」
ゆっくりと口を開いて出たその言葉に、亮介が優しい目でひなを見つめながら首を傾げる。
「……私、亮介の事が好き」
「…………」
ハッキリと好きだと言ったひなの目は、当然真剣そのもの。
亮介は突然の事で息を呑んだだけで声は出さない。
その亮介の反応に伝わっているのかが心配になったひなが再び口を開いた。
「昔からずっと亮介の事が大好き……なんだよ」
「それ、……マジ?」
ギュッと亮介の両腕がひなの背中に回る。
ドキドキと大きな音をたてているのはひなの心臓か、亮介の心臓か。


