『まあ、今日はどうせ会うんだし。話ならその時に聞くぜ!』
「うん。そうだね。話、聞いてもらうよ」
『おう。じゃあな!』
電話が切れると、ほっと胸を撫で下ろすひな。
安心した。
まだ、何も変わっていない。
私はまだ何かが出来る!
よしっ!と一人気合いを入れたひなは、まだ手に持っていたスマホで、次の相手へと電話を掛けた。
コール音が2回鳴ったところで、愛しい人の声が耳に響く。
『もしもし。ひな?どうした?』
低くて耳に響くこの声が好きで堪らない。
「りょ……すけ」
亮介の声が聞けただけでひなの胸がいっぱいになる。
『どうした?』
亮介の心配そうな声音。
それに、
「会いたい」
そうひながポツリと言葉を漏らしてしまったのは、それが今一番の願いだからだ。
好きだと伝えられなかったという気持ちが悔しくて、情けなくて仕方がない。
3年後の未来での話なのだが、ひなにとってはついさっきの出来事。
だからこそ後悔がどっと押し寄せてきたのだ。
『今、どこ?』
「校…内」
『そこで待ってろ!直ぐ行く!』
その亮介の言葉で切れてしまった電話を、ひながゆっくりと耳から離した。
仕事中の亮介へ凄い我儘を言ってしまった。
自己中な我儘。
それでも、……それでも今直ぐ亮介に…会いたい。
そう思う程、ひなの思いは強いのだ。


